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十分である。また、ネットワーク上では写真による本人確認も不可能である。行政と国民との関係において重要な本人確認手続をネットワーク上で可能にする認証システムが必要とされる所以である。

(2) 共通識別番号

上記の認証システムはネットワーク上での本人確認のための必須の手段であるが、その認証システムに合わせ、個人の識別番号を行政機関間で共通化することの必要性も議論されなければならない。個々のアプリケーションが独立している限り、そこで各々、付される個人のコードは共通化される必要性は少ない。しかしながら、現在行政機関において進められているネットワーク化構想は、各省庁間、国・地方という横断的なものになりつつあり、それによって、1つの機関を越えた事務手続の処理や行政サービスの提供を実現するためには、各行政機関に共通した個人識別番号が必要となる。

例えば、住所変更のワン・ストップ・サービスの場合、様々な行政機関に蓄積されている住所レコードを更新するためのキーとして各機関に共通した個人番号が必要とされるし、また、現在は認められていないが、市役所が旅券の申請を受付け、それを住民記録台帳のレコードと併せて外務省へ送るようなサービスを開始するとすれば、この識別コードが両システムのレコードを連結する共通コードとなるであろう。

 

(3) 個人コード検討の経緯

個人の識別コードの統一や共通化という議論について、かなり以前から検討されてきた経緯があるが、現在のところ明確な方向が出ていない状況にある。検討されてきた主な内容は以下のとおりである。

?@ 事務処理用統一個人コード

各省庁共通で、ユニークな個人識別コードの導入に関して、昭和40年代に、「事務処理用統一個人コード」が検討されたことがある。これは、現在のようなネットワーク化に伴う本人の認証、識別を目指したものではなく、各省庁が運用しているアプリケーションの個人コードを統一して、事務処理の効率化を図るためのものであったとされている。したがって、国民全員にユニークな番号を付し、それを終生不変のものとして使用するというものであったが、それを国民個々人が認証、識別のために使うという発想は少なかったと考えられる。その意味では、その統一個人コードによる国民のベネフィットが明らかではなく、国民の理解が得られなかったという事情がある。

 

 

 

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